レトロ印刷 同人誌制作全記録

原稿作り(~キャンバス設定)

新規キャンバスを作ります。
画像のとおりです。

特筆すべきは、

  • 「同人誌入稿」を選ばないこと
  • 自分の入稿したいサイズ指定ですること
  • 表紙をページ数に含めること
  • ノンブルを付けないこと
  • 開始ページを右からにしておくこと

です。

これらを破っていると、面付け時にやや面倒なことになりますが、
最低限「サイズ・グレスケ・解像度」が正しければとりあえず原稿を進めても大丈夫です。

ちなみに私は実際の原稿で、基本枠などをこんな感じで指定していました。
薄い中綴じ冊子で、内容も静かな感じなので、ノドと小口の区別はせずに狭めのマージンを指定しています。

設定を間違えた場合は、面付け時に力技で直していくことになります。
1~2時間くらいの格闘の猶予を持って、原稿を進めましょう。

私はめちゃくちゃ「同人誌入稿」設定で原稿していて、左ページからだったし、表紙もオンにしていて、だいぶモチャモチャしましたがちゃんとデータ作れたので安心してください。
※忘れたので解説しませんが、「作品基本設定」とか、ページを入れたり消したりモチャモチャしました。


原稿作り(版分け用設定~本作業)

ページごとの設定ですが、同一ページ内に複数の色を使う場合は、版の数だけ乗算レイヤーフォルダを作ります

乗算レイヤーフォルダにレイヤーカラーを設定して、色を使いたいインク色に寄せます。
すると、そのレイヤーフォルダ内のレイヤーは全て、設定したカラーに置換されて表示されるようになります。

あとは「これは〇〇色で描画したいな~」と思うものを都度そのフォルダ内に描画したり、
あとから「やっぱここは〇〇色で…」ってところをフォルダにぶち込んでいくだけです。

これをしておくと、色がついた時のイメージもしやすい(途中でレイヤーカラーを変えてインク色を変えた時の雰囲気を見ることも出来ます)ですし、
なにより入稿時にめちゃくちゃ楽になります。
まぁそれは後ほど……。

というわけで、原稿が進んでいきます……。


前述の通り、私は「同人誌入稿」設定で進めてしまったため、「表紙・裏表紙」がありますが、
本来は1.2.3…と並んでいるはずです。
ページ番号は違いますが、みなさんもこの順で描いていきましょう……。

【ノンブルについて】
通常の原稿と同じように自動でノンブルを入れた場合、面付け時をした際にぐちゃぐちゃな順番でノンブルが入ってしまいます。
面倒ではありますが、ノンブルは手動でテキストとして入れるのが確実な方法です。
(一度出力してからページに貼り付けるという手もありますが、n色刷りデータだとややこしいので…。)
せっかくの機会だったので、私は手書きでページ番号を描き込みました。
逆手に取れば自由に遊べるということなので、ページごとにフォントを変えてみるのも面白いかもしれませんね。

【コラム】グレスケ? トーン?

リソグラフ印刷ではトーンがやや粗く印刷される印象です。
一方グレスケはややムラっぽくなったり、紙によってはカスレが出る仕上がりになります。
どちらをとるかは完全に好みですし、紙との相性によっても変わってくるので、印刷見本を見ながら選定していくと良いです。

私は今回の同人誌において、レトロ紙Aというカスレが出やすい紙を使うことを決めていたので、
過剰に粗い印象になってしまうことを避け、トーンは使わずグレスケで描きました。
カスレが情報量をあげてくれるのも考慮して、ベタ面はあえて多めにしてあります。

他のカラーポストカード原稿では、グレスケとトーンを併用したこともあります。
特に肌の面が広い場合など、ベタだとムラが出て汚い印象に仕上がることがあるので、トーンを併用してムラを抑えています。

↑肌のベタの上に、少しだけトーンで青い影を入れています。

また、小技にはなりますが、
同じ色のインクでもトーンとグレスケでは知覚する色が若~干、違うため、(トーンのほうが少しだけ暗く沈んだ印象に見えます)
さらなる高みを目指す方はそういうことも考慮するといいかもしれません……。

【コラム】原稿上の注意点(階調表現について)

リソグラフ印刷は濃度5%以下の薄い階調表現が苦手です(トーン・グレスケ共に)。
例を挙げると、100~0%のグラデーションを作った時には、5%以下程度のところで急に真っ白になって(割れて)しまう可能性が高いです。
これは版に穴をあけて刷るというリソグラフ印刷の特性なので仕方ないです……。

この現象を回避するためには、グラデーションの下限を5~10%にとどめておくことが重要です。
どうしても白にしたい時は、カケアミブラシ等で削ってグラデーションを作ると割れが目立ちません。


面付け用見本出力(余力があれば)

キャラ線画ができたあたりで池袋に用事ができたので!
同人工房に駆け込んで、冊子で印刷してもらいました。
(キンコーズなどでも同様のサービスはあるかと……!)

全2部印刷して、1部は本としての読み心地確認のため、
もう1部はホチキスを外して、来る面付けのためにどのページとどのページが表裏になっているのか確認しました。
また、線画段階で面付け見本を制作することで、
「このページとこのページが一緒の面だから3色で…この面は少ししか2色目を使わないから、1色に減らそう」など、
色を指定する上でとても役立ちました
せっかく片方のページで3色使っているのに、もう片方のページで1色しか使っていないのはもったいないですからね。

ただ、見本出力用の原稿を作る労力はかかってしまうので、余力があればの感じです。
私としてはめちゃくちゃ参考になったのでオススメしたいです。


面付け

長い時を経て、原稿ができ……できましたね!?
ついに面付けの時を迎えました。

無線綴じ・平綴じ製本の場合、面付けは不要です。分版データ出力まで飛ばしてください。

面付けの前に、2つほどやることがあります。
ひとつめは、原稿をフォルダごとどこかにコピー&ペーストしておくこと!
これは面付けをミスった際のバックアップになります。

2つ目は、仕上がり見本の出力です。
印刷所の方がこれと本入稿データを見比べて、変な出力箇所があったら教えてくれます。
義務ではないようなので、締切が迫っていてやばすぎる人は飛ばしてください。

表示したい全てのレイヤーを表示した状態で、「複数ページ書き出し」→「一括書き出し」を選択します。
(乗算レイヤーも乗算のまま表示しておいた状態です。)

ファイル形式にpsdを指定して、全てのページを書き出します。

これでOKを押したら出力が始まって、終わります。
以上で見本の出力は完了です。入稿時にこちらも一緒に提出しましょう。

さて面付けに入っていきます!

面付けは、

  1. 見開きページがある場合、単ページに変更する
  2. 順番を入れ替える
  3. 全てを見開きページに変更する

という順で行います。

鬼門に思える順番入れ替えなのですが慣れれば結構単純で、
1から順に見開きごとに交互に左右に並ぶように差し込んでいけば秒で終わります。

図を作るのが厳しいので、「コウハン!」を見ていただくか(本当にこれが中綴じ入稿のバイブル)、
JAM様のこのへんのブログ記事を見ていただくとわかりやすいかと……。
https://jam-p.com/blog/nakatoji/
でも「コウハン!」が最もわかりやすいので、冊子作る方は持っておくと便利です。
またこの時、キンコーズや同人工房で印刷した冊子見本が手物にあると、目視で1ページ1ページ確認して安心できます。

並べ替えて見開きページに変更すると、こんな感じになります。

出力のためにデータをいじったあとなので白いところが目立ちますが、本来はページ順が変わっただけの状態です。
5に最後のページが、6に最初のページがきていて、最後に冊子の真ん中の2ページがきていますね。

ここまで来たらあと少しです!


分版データ出力

面付けが済んだら、面ごと・色ごとに分けて出力します。
例えば16ページ(全ページ2色刷り・中綴じ)の本を作る場合、紙4枚×2面(両面)×2色の計16個のファイルが必要になります。
ワンクリックで出力できる現代においては途方もない作業に思えますが、安心してください!
我々は既に色を付けたレイヤーフォルダに分版データを仕分け済みですから、それを表示・非表示にして出力するだけでいいのです!
(にしても時間はかかるので、一応半日程度は時間に余裕を持っておきましょう……)

以下は黄土色の出力の例です。

  1. 黄土色部分以外のレイヤーを非表示にする
  2. レイヤーカラーを非表示にする
  3. 「画像を統合して書き出し」→「psd」
  4. 「honbun(何枚目)_(オモテウラ)_(インク名).psd」の命名規則で出力する

今度は塗り足しを含むサイズ&グレースケールで出力します。

色名はレトロ印刷様の「紙とインク」(https://retroinsatsu.com/paperink/ink-list/)より指定します。

これを全ページ・全色で行った状態が以下になります。

ここまできたら入稿秒読みです!
さっき作った入稿見本データ(nyuukou-mihon.psd)をまとめて一緒にいれて、zipに圧縮して、レトロ印刷様にお送りするだけ!

お疲れ様でした~!

ちなみに、実際の3枚目オモテのページを見てみると、以下のように分版されています。

一枚目から、黒・黄土・スカイです。
これが合わさると、以下のような仕上がりになります……!

ちゃんと面付けにも成功しているので、左側には正しいページが来ていますね。

ベタ部分もカスレが出ていていい具合です。
レトロ紙は薄手なのでベタ部分の裏写りはかなりあるのですが、手触りがいいと評判だったのでうれしいです。

【コラム】注文のタイミング

印刷所によっては先に注文だけ入れたり、予約をする必要があったりしますが……、
レトロ印刷様においては原稿が全て揃ってから注文→即入稿→入金がスタンダードな注文の流れのようです。

仕様を入力して注文するとすぐに入稿画面に移ります。
同時に、注文内容と入稿用URL(注文後の入稿画面でで入稿していない方・再入稿したい方用)が記載されている自動メールも届きます。
翌日、お見積り金額が送られてくるので、入金して仕様確定という流れです。

レトロ印刷様は同人誌に特化している印刷所ではないからか、イベント前の繁忙期においても受付早期満了はないようです(2024年6月現在まで)。
ただし、繁忙期に割増が使えなくなることはあるらしいので、ご注意ください。
また、用紙によっては供給が安定していないため、タイミングにより希望した装丁で作れないことがあります。ちょいちょいウェブサイトをチェックしておくといいです。


末尾になりますけどモ、同人誌の本文はpixivに載っけているので気になったらどうぞ~。
https://www.pixiv.net/artworks/118338921
(エロなしのゆるBL。事情を知らず読めますが、一応ネタバレはあります)

webで公開しているのは全ページモノクロです。
同人誌の方は完売してしまいましたが、2024年12月になんかまた橋姫オンリーあるということで、
なんか私も参加するらしいので、その際に微再販するカモしれないです。
▼BOOTHのページ。微再販の際はこちらに追加予定です。
https://cocon-ew.booth.pm/items/5695305

以上、レトロ印刷のオタクからでした~。

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